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動を拘束するために付加水の効果が大きくなり、固有振動数がかなり小さくなる(最低次では1/3以下)。また、そのために2次元解析の構造の応答が過大に評価されていることがわかった。この結果から判断すると3次元問題の解析をする必要がある。

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Fig. 4 Natural frequencies of dry and wet modes

3.4 浮体の弾性応答とradiation問題
Fig.4は、増田ら[7]にとり行われた実験と解析の応答曲線の結果のグラフに本研究で開発した解析コードにとって数値計算を行った応答曲線をプロットしたものである。本計算の結果は×印を結ぶ線である。図中の■が実験の計測値であり、その他は増田らの解析結果である。対象としている計測箇所は波下側中心線端部である。この結集を含むいくつかの検証により本計算結集の妥当性が確認された。

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Fig. 5 Comparison between the present numerical analysis and experiments by Masuda et.al.[11]

Fig.6はTable2の実機試験モデル[6]に対して入射側、中央部、波下側の3点について応答曲線を計算したものである。これより次のことが言える。
・入射側の応答が一般に大きい
・incident&diffraction potential から予想されるように、L/λ>2では入射側付近を除くと応答が小さい。
・弾性支持された梁あるいは平板の応答のように、振動応答的なピークは見られない。これは、入力となる波強制力が入射側にのみ集中していることとradiationによる造波減衰がかなり大きいことによるものと思われる。
図中にwet modeの固有振動数を示してあるが、固有振動数に対応する部分に共振に対応するようなピークは見られない。これもやはり造波減衰が大きいためであり、wet modeの固有振動数が応答の極大値に対応しないので、情報として固有振動数はあまり重要でないことになる。
さらにこの場合のL/λ=2.7の場合について浮体中心線上(y=0)の変位応答の分布と位相に関する計算結果をFig.7に示している。この点は浮体波下側の応答の極大点であり、弾性振動的な成分がやや加わっている。また、λ/Lが2を越えるところでは1周期の変形応答の形状が波の波長にかかわらず類似している。また、1周期内の浮体の変形形状を観察すると、浮体の端部付近を1つの集中荷重で周期的に加振した応答の様に見える。また、この場合幅方向には変位はほぼ一様であった。
Fig.8に浮体周りのradiationポテンシャルおよび全速度ポテンシャルの分布を示す。全体的に応答の大きなA点については、ちょうど入射potentia1とdiffractionpotentialの和の大部分を打ち消すようにradiationpotentialが発生する。すなわち入射波がほとんど透過するような状態となる。点B,C,E,Fという風に浮体構造物の長さに対して波長が相対的に短くなるにつれて浮体後方のradiationが小さくなるので波下側方向に波のあまり生じない領域が形成される。
4. 結論
著者らが開発した線形流力弾性数値解析コードを用いて本研究で得られた結果は以下の通りである。
・水深が波長の半分以上になるとほぼ無限水深と見なして良い。
・流体力に関しては入射波の波長の1/10の長さの辺を有ずる正方形線形境界要素メッシュを用いればほぼ収束した解が得られる。
・wet modeの固有振動数を求めても、造波減衰がかなり大きいため、接小振動のような顕著な応答のピークが現れないので、情報としてはあまり役立たない。
・2次元問題で評価すると流体力および応答が過大に評価され、波下側まで波が透過する傾向にあるので、3次元問題を解く必要がある。
・浮体の長さに対して、波長がある長さ以下になると、波の波長の長さに関わらずほぼ一定の形状の弾性応答となる。
・波長の短い彼ほど波下側まで伝わらず、横に放射されてゆくので、波下側にはあまり波の起きない海域が形成される。

 

 

 

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